AQUOS PHONEのネーミングでスマートフォンのラインアップを展開するシャープは、各社に魅力的なモデルを供給しているが、ウィルコム向けにはPHSを供給し、この4月には新たに「PANTONE WX03SH」が発表され、4月25日から販売が開始された。WX03SHは、コンパクトなストレート形状で、PANTONEカラーの6色展開。さらには防水・防塵にも対応した端末だ。
PHSについては、スマートフォンの普及がこれだけ進み、LTEやWiMAXなどの数十Mbpsクラスのモバイルデータ通信サービスが提供されている現状を考えると、「なかなか利用されないんじゃないの?」と考える人もいる。確かに、通信速度やスマートフォンのスペックだけに注目してしまうと、そういう見方もあるだろう。でも、LTE&スマートフォン時代だからこそ、PHSを持つ意味があるという声も多い。それは料金的なメリットが大きいからだ。
こう書いてしまうと、「あー、ウィルコムの『誰とでも定額』のことね」のひと言で片付けられてしまいそうだが、ちょっと冷静にメリットとデメリットを考えてみると、意外に効果が大きそうなことが見えてくる。
まず、各社が提供するLTEサービスでは、これまでの3Gサービスから料金プランが変更されている。たとえば、NTTドコモのFOMAでは使う人の利用量に応じて、「プランS」や「プランM」といった複数の料金プランから選ぶことができたが、Xiでは2年間の継続契約の有無で選ぶ「タイプXi にねん」「タイプXi」しか選べない。ソフトバンクは元々、「ホワイトプラン」のみで基本的に同じだが、auは3Gサービス(従来のCDMA 1X WIN)で「プランSSシンプル」や「プランEシンプル」などが選べたのに対し、4G LTEでは「LTEプラン」のみ。
この料金プランが選べないことの何がデメリットなのかというと、いずれも基本になる通話料が割高に設定されているからだ。たとえば、FOMAやauの3Gサービス向け料金プランでは一部の例外を除き、月々の基本使用料に一定額の無料通話分が含まれ、通話料は選んだ料金プランによって、もっとも高い30秒あたり21円から、もっとも安い30秒あたり7.875円が設定されている。これに対し、Xi向けの「タイプXi」は30秒あたり21円のみで、auのLTEプランやソフトバンクのホワイトプランも同額だ。
つまり、3Gケータイや3Gスマートフォンを利用していたユーザーがLTE対応スマートフォンに移行することで、快適な高速通信が利用できるかもしれないが、実は通話料が割高で、月々の支払いが増えてしまったというケースが起こり得るわけだ。もちろん、NTTドコモの「Xiトーク24」、auの「au通話定額24」「通話ワイド24」、ソフトバンクの「Wホワイト」などの通話料割引サービスを利用することで、通話料の単価を下げたり、特定の相手への通話料を減らすことはできるが、適用される範囲は限られている。
その点、ウィルコムの「誰とでも定額」は、固定電話に掛けても携帯電話に掛けても1回あたりの通話が10分以内なら、基本的に無料(月500回まで)。友だちや仲間との連絡であれば、SNSやメールを使うことも多いけど、仕事やお店などへの連絡は音声通話を使うことが多く、この無料通話のメリットは活かしやすい。実は、筆者自身も最近は編集部や仕事関連の担当部署への連絡には、PHSをよく使っている。
LTE&スマートフォン時代にPHSを使うもうひとつのメリットは、消費電力だ。改めて説明するまでもないが、スマートフォンは従来のケータイに比べ、消費電力が大きい。シャープのIGZO搭載ディスプレイや大容量バッテリーなどにより、連続使用時間を延ばす製品も増えてきているが、それでも気が付いたら、電池残量が少なくなってしまい、友だちに「ごめん。今日はもう電池ないから、あとの連絡はメールで!」なんて伝えなければならないこともある。
そんなとき、もうひとつの通信手段として、PHSがあれば、役に立つ。PHSは元々、消費電力が少ないことが知られているが、たとえば、電話番号を通知する友だちの携帯電話宛て、仕事関連の相手への音声通話はスマートフォンを使い、電話番号を通知する必要がない会社やお店などの固定電話宛てはPHSを使うことで、電池残量の消費を分散し、スマートフォンのアプリやSNSは思う存分使うといった利用スタイルも有効だろう。
じゃあ、どういうPHSを選ぶのかという話になるが、どのPHSでもいいというわけでもない。やはり、スマートフォンの存在を活かせるPHSを選びたいところだ。スマートフォンを活かすことができるPHSの機能については、次回、ご紹介しよう。
(法林岳之)